2010年02月01日
勝者のフットワーク塾 オーストラリア旅行記2
定刻どおり飛行機は離陸した。
Q社の飛行機は世界一安全を誇る運航なので、安心して10時間のフライトを楽しめる。機内雑誌のページをペラペラめくっていると「乗務員の人たちお達者クラブのみなさんですか」後ろの座席のヒロセが背もたれ越しに言った。
確かにCAの高齢化はちょっと気になるが、経験豊富ということを期待することにした。何でも若ければいいというものではないのだ。そんなことを考えている間にご年配のCAの方々は夕食の準備に取り掛かった。
いつも思うのだが、この座りながら配膳を待つ感じというのは、何となく農家で育てられている鶏や牛たちの気分を想像してしまう。大勢が同時に同じ方向を向いて同じ物を機械的に食べるってどことなく心寒い気がする。そう思うのは私だけだろうか。
そんなことを思っていても目の前の牛丼と称されたものをしっかり平らげ、とりあえず背に腹は変えられぬとはこのことか。ご馳走様でした。
これからはリラックスタイムだ。シートを無造作に倒した。後ろはヒロセだから気兼ねない。オンデマンドの映画を選び、CAにワインを頼んだ。程なくやってきて、私の前のテーブルにワインの注がれたプラスチックのコップとワインを置いて行った。
オーストラリアワインのフルーティーな香りが口のなかに広がる。うーん、リラックス。心は映画の世界に入って、ゆったとした時間が流れていた。
そのとき、突然、バン!!という音がした。何が起こったんだ。私の顔の前をワインのボトルが舞っている。そして、落ちてきた。ボトルからワインがトクトクと音を立てて股間にこぼれ始めた。もちろん、コップの中のワインもだ。一口しか飲んでないのに。
どうやら、隣の席の若者が、組んでいた長い足を組み替えた瞬間に膝で私の前のテーブルをおもいっきり蹴り上げたらしい。慌てた若者がたどたどしい日本語で「スイマセン」を連発している。正直、こうなると怒る気もしない。
「大丈夫です」と言ったものの、はっきり言って全然大丈夫ではなかった。若者のサインに反応したCAがやってきた。こういう時にベテランのCAの経験が生きるものだ。慌てず騒がずナプキンを山盛り持ってきて私の股間に積み上げて去って行った。それだけだ。
不幸中の幸いは白ワインだったことだが、結局フルーティな香りをたっぷり吸って湿っている私の股間は朝まで乾くことはなかった。
決して快適とは言えない夜を過ごし、飛行機の窓の外はしらじら明けているのに気がついた。もうすぐシドニーだ。4年ぶりのオーストラリアの大地が見える。やはり、心拍数が上がっている。シドニー湾のシドニータワーが目に入った。 心拍数は最高潮になる。胸に熱いものがこみ上げて、心には何故だか達成感みたいなものがあった。
ついにオーストラリア上陸だ つづく
Q社の飛行機は世界一安全を誇る運航なので、安心して10時間のフライトを楽しめる。機内雑誌のページをペラペラめくっていると「乗務員の人たちお達者クラブのみなさんですか」後ろの座席のヒロセが背もたれ越しに言った。
確かにCAの高齢化はちょっと気になるが、経験豊富ということを期待することにした。何でも若ければいいというものではないのだ。そんなことを考えている間にご年配のCAの方々は夕食の準備に取り掛かった。
いつも思うのだが、この座りながら配膳を待つ感じというのは、何となく農家で育てられている鶏や牛たちの気分を想像してしまう。大勢が同時に同じ方向を向いて同じ物を機械的に食べるってどことなく心寒い気がする。そう思うのは私だけだろうか。
そんなことを思っていても目の前の牛丼と称されたものをしっかり平らげ、とりあえず背に腹は変えられぬとはこのことか。ご馳走様でした。
これからはリラックスタイムだ。シートを無造作に倒した。後ろはヒロセだから気兼ねない。オンデマンドの映画を選び、CAにワインを頼んだ。程なくやってきて、私の前のテーブルにワインの注がれたプラスチックのコップとワインを置いて行った。
オーストラリアワインのフルーティーな香りが口のなかに広がる。うーん、リラックス。心は映画の世界に入って、ゆったとした時間が流れていた。
そのとき、突然、バン!!という音がした。何が起こったんだ。私の顔の前をワインのボトルが舞っている。そして、落ちてきた。ボトルからワインがトクトクと音を立てて股間にこぼれ始めた。もちろん、コップの中のワインもだ。一口しか飲んでないのに。
どうやら、隣の席の若者が、組んでいた長い足を組み替えた瞬間に膝で私の前のテーブルをおもいっきり蹴り上げたらしい。慌てた若者がたどたどしい日本語で「スイマセン」を連発している。正直、こうなると怒る気もしない。
「大丈夫です」と言ったものの、はっきり言って全然大丈夫ではなかった。若者のサインに反応したCAがやってきた。こういう時にベテランのCAの経験が生きるものだ。慌てず騒がずナプキンを山盛り持ってきて私の股間に積み上げて去って行った。それだけだ。
不幸中の幸いは白ワインだったことだが、結局フルーティな香りをたっぷり吸って湿っている私の股間は朝まで乾くことはなかった。
決して快適とは言えない夜を過ごし、飛行機の窓の外はしらじら明けているのに気がついた。もうすぐシドニーだ。4年ぶりのオーストラリアの大地が見える。やはり、心拍数が上がっている。シドニー湾のシドニータワーが目に入った。 心拍数は最高潮になる。胸に熱いものがこみ上げて、心には何故だか達成感みたいなものがあった。
ついにオーストラリア上陸だ つづく